軍部というものの出鱈目を戦後にじっくりと皇軍の最高幹部田中隆吉がぶちまけている。
平成愛国カルトに洗脳された者たちがまったく知ろうとしない昭和軍需利権の内実である。

田中隆吉関東軍参謀・羅南要塞司令官(1893年生)著
敗因を衝く : 軍閥専横の実相 』(中公文庫)より一部引用

、、、、、賄賂は公行した。虐殺と掠奪と暴行は枚挙にいとまがなかった。、、、、


ある高級司令部では政治経済の監督の責任を有する特務班の幹部全員が相語らって、巨額の公金を
遊興の費に充てた。
ある守備隊長は、富裕にして親日家たる華僑を
惨殺して巨額の黄白(=金銀)を奪い、これを土中に陰蔽して他日の用に備えた。
ある憲兵隊長は、愛する女に
収賄せる多額の金額を与えて料亭を経営せしめ、その利益を貯えた。
ある特務機関長は、関係せる女の父親に炭鉱採掘の権利を与えた。ある
中隊長は戦地における部下の兵の携行する写真により、その妻が美貌の持主であることを知り、陸大受験のために内地に帰還するや、東京の宿にその兵よりの伝言ありと称してこの妻を誘い寄せ、忌わしき病気さえも感染させた。

内地においても、大東亜戦争の中期以後における
軍隊の暴状は、あたかも外地に似たものがあった。
暴行もあった。
収賄もあった。
掠奪もあった。
拳銃をもって威嚇し、人民の
家屋を強奪したものもあった。
ある大隊長は民がひと月五合の酒に舌鼓を打ちつつあるとき、常に四斗樽を備えて
鯨飲日も足らなかった。
国民が乳幼児と病人のため、牛乳の入手に多額の金を工面しつつあるとき、健康なるある連隊長は、配給所に対し1日五合の牛乳の配給を
強制した。
国軍の将校を養成すべきある学校の高級将校は、生徒に配給せられたる石鹸数百個をその家庭に運び、これを米麦と交換して一家の生活の資とした。


ある兵工廠の経理官は、地方のボスと結托し、軍需品の横流しを行い、巨額の金を私した
熊本では外出した兵が
女学生を強姦した事件があった。
しかも
これらはわずかにその二、三の例に過ぎぬ

 海軍もまた、概ねこれと同工異曲であった。否、陸軍よりもさらに腐敗していた。

呉の工廠では数年にわたって工廠長以下が出入り商人と結托し、多額の収賄を行った事件があった。
ある地方では、海軍の兵が
婦女子を強姦した。
父兄が抗議すると、隊長は昂然として言った。
「戦に負けて青目玉の子供を産むよりよいだろう」と。

さらに奇怪千万なるは食糧である。国民が一日二合三勺の主食の配給に、日に日に痩せ衰えつつあるとき、軍隊は戦時給養と称して一日六合の米麦を貪り食った
肉も魚も野菜も国民の配給量の数倍であった。国民が雀の涙ほどの配給に舌を鳴らしつつあるとき、ある師団の移転の際には、携行し得ざる二百石の清酒が残った。大都市の民が、椀の底が早えるような雑炊を主食の代りとして吸い込みつつあるとき、高級官衛に勤務しある軍人及び軍属は、外食券を用いずして二十五銭の弁当にその腹を膨らました。


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